AAR/女王想話

最終話 ~Lancaster the Conqueror~

終わりの気配

ある日、村にお触れが出回った。
王様がオラのような穀潰しを高い金を払って雇ってくださるという。
頭使って働くのは嫌だけぇいうたけんど大丈夫といわれて重い腰をあげただ。

「クソ虫ども、皇帝に忠誠を誓う時間がやってきたぞ!」

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銃を持たされてお仕着せの制服拵えて、連れて行かれた先はアフリカのチュニスいうところじゃった。
鬼軍曹の号令一下、前から順番に突撃を開始する。
オラは空を見上げた。
聳え立つ城壁に足がすくんで逃げたくてしょうがない。

ばたばたと目の前で人が死んでいく。
助けてくれ母ちゃん。
オラ心入れ替えて野良仕事がんばるから…。

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~ とある一兵士の人生最後の述懐 ~

嵐の前触れ

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大英帝国は領邦全土から金をばらまいて大量に歩兵を雇い入れた。
対象は主に穀潰し、荒くれ者だった。
皇帝は現地指揮官に対し、突撃多用を厳命している。
すでに皇帝が戦後の経済反動を見据えての行動をすでに開始していたことが窺える。
全てが終われば行き場を失った軍人の処遇に困るからである。

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大英帝国の傘下に入ることを拒む唯一の国、マールワ王国。

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マールワ王国に対し、ジャウンプル、ヴィジャヤナガラ、クジャラートといったインド諸藩に対して大英帝国は多額の資金援助を行なう。
こうして大英帝国は自身の手を汚さずにマールワ王国を弱体化させていく。

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1748年にはメキシコ自治政府の保護下にあったアステカの処遇を巡ってトラブルが起きたが、メキシコ自治政府が直接統治することに合意したことで無事に処理された。

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こうして新大陸は小さな原住民部族も含め、1749年には完全に大英帝国の支配下に置かれたのである。

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1755年には中東が…

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1756年にはアフリカ全土も大英帝国の保護下にあった。
世界で独立を許されているのは帝国が敵と看做していない国家のみとなっていた。

~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「大英帝国興隆史」より ~

人類最後の戦争

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御歳71、56年目の治世を向かえる老王ウィリアムは未だ健在だった。
自らの手でランカスターの夢を成就する。
その執念だけで皇帝は生きながらえたのである。

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「ブルガリア、陥落いたしました!」

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「アヴィニョンから降伏の使者が参りました」

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「ヌヴェールも臣従の意を示しております」

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「ああ…民の声が聞こえる。ランカスターを讃える世界の声が余の耳に鳴り響いておる…」

皇帝は恍惚の表情を浮かべた。
神に認められぬ王と蔑まれ、庶子王と疎まれて全てを否定された王はもはやいない。
一代で世界の半分を皇帝ウィリアムは征服したのである。

「ランカスターの夢を成就し、余はようやくランカスターの一員になれたのだ」

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世界から隔離された玉座の上で皇帝ウィリアムは確かに聞いた。

「征服王ウィリアム万歳!」

1757年8月31日。
世界はユニオンジャックの旗の下に統一され、ランカスターを讃える声が全世界に轟いた。
かつて一人の女王が描いた夢は、この瞬間、確かに果たされたのだ。

~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「大英帝国興隆史」より ~

エピローグ

かつて大きな夢を抱いた一族がいた。
一族が築いた帝国はあまりにも大きく、もはや人の目が行き届かない場所に溢れていた。
中央から派遣された役人による汚職はあまりにも酷く、人々の不満が堆積し巨大な帝国は崩壊寸前となった。
この帝国もかつてあった偉大なる帝国達同様、退廃と汚職に足を捕まれ沈むであろうと誰しもが思った。

そんな時、大英帝国皇帝はかつてスペイン公国が生み出した地方政府、植民国家の制度を改良して帝国を統治した。
すでに長年にわたって新大陸で蓄積されていたノウハウは機能した。
しかしそれぞれの地方政府が分離独立しないように意見の調整をする場が必要とされた。

かくして神聖イギリス帝国議会(正式名称、神聖にして唯一の帝国議会及び諸連邦における合同議会)が開設される。
これはその第1回神聖イギリス帝国議会における皇帝の開会演説である。

同床異夢の人々へ

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世界各地の民衆の代表者達、帝国の遥か辺境からアントワープへの長旅ご苦労。

この議会が開会される前に言わなければならないことがあります。

まず皇帝たる私と貴方達帝国議員の意志は一つではなく夢もまた異なっているという当然の事実を改めて認識してください。
そこから私の退屈な話を始めましょう。

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…バベルの塔が崩壊した際、言葉は失われ、他者とわかりあえない故に人は明確な生きる理由を見失いました。

私達人類は改めて言の葉を拾い集めました。
……不完全な、崩れたままの欠けた言葉を。
貴方達も言葉を繰る際に思ったことがあるでしょう。

同じ国の同じ民に同じ言葉で語りかけても自らの意志が伝わらないと。

例え自らの言葉に技術の化粧を施しても、見えない何かに阻まれて十全に伝わることのないもどかしさを私は幾度も味わったことがあります。
完成された言葉の形を知らない私達は未だ満たされた言語を作る術を知りません。
そのような未完成の言葉を振るっただけではけして一つの意志は生み出されないでしょう。

かつてランカスター家に私と同じ名を持つ一人の偉大な女王がいました。
彼女は自らの意志を時を越えて伝える為に宮廷歴史家という制度を創設しました。
代々の宮廷歴史家達が紡いだ書は幼い頃の私を満たしてくれたのです。

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女王と忠実な騎士の物語、二つの冠を抱いた王の話、幸福にあった女性の深い絶望の物語、偉大なる皇帝位を目指した王達の話、豊かなる五賢帝の時代……そして自らを否定されてもなお世界を求めた征服王の物語。

その書を読んだ時、私はランカスターの夢の住人になることができたのです。
私にとって皇帝位は重責を担った責務ではなく、成したいと願うことを適える為の宝冠となりました。

この書は本日の帝国議会が閉会した際に全て公開いたします。

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(秘せられたランカスターの記録を惜しげもなく公開するという女帝の言葉に会場はざわめいた)

静粛に……話を続けましょう。

かつて大きな野望を抱いた女王は思いました。
一代で夢を成し遂げるにはあまりにも人の生は短く、成すべきことは多いと。
狡賢い女王は自らの夢を子孫に託し、神の国からその実現を「私の狙い通りにことが運んでいるわ!」「何をやっているのよこの阿呆!」と品位が問われるような卑しい言葉で野次を飛ばしながら見つめているのでしょう。
今でもしたり顔をしているであろう女王を思い浮かべると、微笑ましい反面腹が立って仕方がありません。

(会場から偲び笑いが漏れる)

…貴方達は成すべき夢の大きさに圧倒され、生ある内に夢の実現が不可能であることを悟り、生きる意味を失ったことがありませんか?
そうした人々がすることは決まって自らの夢を矮小化することです。
そんな孤独な人々の嘆きのような縮こまった夢が重なり合うことは、幾ら言葉を尽くしたところでありえません。

かつて愛する息子を失い、自らの夢が適わぬことを悟り、途方にくれていた女王がいました。

そんな時、彼女は周りを見渡しました。
先を歩むものがいる。若きものがいる。小さきものがいる。人が沢山いる。

先を歩むものは多くの欠点がありながら、誰もが必ず一つは光るものを持っていました。
だから女王は言いました。
私にその光るものを分けて欲しいと。

若きものは夢に溢れながらも厳しい現実に打ちのめされていました。
だから女王は言いました。
私も手伝うから大きな夢を分かち合わないかと

小さきものはまだ何も知らず、日々を生きるので精一杯でした。
だから女王は言いました。
私の夢を見てごらん。こんなにも愉快で楽しそうでしょう。だから前を向いて一緒に歩きましょうと。

例え自らの生が失われようと、不完全な言葉は受け継がれ、語り合った小さきものたちが夢を膨らませ、いつか適える日が来る。
一人であることを止めれば私は不自由な個から開放される。
だから話合おう。どれだけ伝わらないと涙しても。

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帝国議員の諸君。
膨大な版図を持つ我々の帝国は山と詰まれた大きな課題を抱えています。
その課題に打ちのめされ、自らの理想を矮小化しないよう私は願います。

我が一族は勝者の特権を行使し、貴方達に強要します。
他者を屈服し強要しようとする卑屈な個ではなく、他者と調和したいと願う誇りある個であるようにと。

貴方達が抱く大きな夢の数々がこの議会で重なり合う時、ありとあらゆる問題は解決されることでしょう。
そう、かつて無謀な夢を抱いたある一族が途方もない夢を適えたように。

民衆の代表者である議員諸君が不完全な言葉で存分に語り合い、大きな夢を重なり合わせる瞬間を私に見せてくれるよう願います。

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さあ始めましょう!
隣の者と、目の前にいる者と、後ろにいる者と、ありとあらゆる人と語り合いましょう。

これを持って女王を想う話は終わり、第一回神聖イギリス帝国議会の開会を宣言します。

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~ 皇帝マリー3世・ランカスターの第一回神聖イギリス帝国議会における開会演説より ~

女王想話
~ Queen save the god~

The end

…thank you for reading!

AAR/女王想話

詳しい解説はハートマン軍曹白熱教室 世界征服編最終回にて


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Last-modified: 2014-04-23 (水) 04:17:43