AAR/海禁史紀事本末

龍は何を食べるのか? 食べたいものを食べる

明には史上最強の軍隊がある

ゲーム開始時点の明は正統帝の御世ですね。
明朝は六代目の皇帝を迎え、円熟期の隙間から社会動乱の兆しが見え始めているころ合いです。

史実に従えばオイラートでプレイを開始し、遊牧民ディザスターを発生させこれぞ土木の変と喜ぶのが楽しそうです。

しかしながら本プレイでは北虜ではなく南倭に注目します。とは言えあまり倭寇のイメージが湧いてきませんのでモデルタイプとして鄭成功を引っ張ってきます。

鄭成功とは日本では国姓爺合戦の主役として知られ、明朝復興を目指し励んだ大海族ですね。
厳密に言いますと彼は倭寇ではないそうなのですが、東アジアを中心に活動した海賊との事でカスタム国家の参考といたします。

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初期領土はフィリピン全域+台湾+沖縄+済州島。
東アジアではなく東南アジアを中心に活動する海賊たちの元締めとして、400ポイント以内でデザイン。
海軍重視ですとまったくもって明の誇る膨大な軍隊へと勝利を望める気がいたしませんね。

ちなみに倭寇プレイですと本来であれば海賊共和国でプレイするのが筋なのでしょうが、DLC Golden Centuryを未保有の為NIでそれらしく補います。
アイディアは海運・海軍の順で選択。一番大切なものは海軍保有量拡張NIですのでそれ以外はフレーバー要素です。

さて本プレイのテーマたる倭寇の出自につきましては、邪馬台国や黄金の国ジパングなどと同じく、複数の説がありますね。
本プレイではフィリピン説を採用いたします。

ちなみにフィリピンはスペイン征服以前の歴史が殆ど現存していないそうです。
地域大国である中華世界にとって、地続きでもない南方蛮族は興味を持たない存在だったらしく中国側の文献でも記載は僅かだそうな。

数少ない伝説ですと海から取った砂金や黄金を、中華世界へ持ち込んでいたとかいないとか。
海で取れる砂金って何なんですかね?

一説によるとフィリピンの名産である黄金色に輝く金真珠(ゴールデンパール)が候補であるとか。
大粒の真珠は自然界ではなかなか見つかりませんが、ゴマよりも小さい砂粒サイズであればそれなりには集める事も出来るもよう。

現代において宝石の王様はダイヤモンドですが、近代以前は真珠が海の女王として洋の東西で高い価値がありました。
今は昔の物語、正しいものを知る人間は誰もおりませんが、ほんの一幕お付き合いをお願いいたします。

私は皇帝を誰よりも賢いと思っていた

老人達の知恵が及ぶ事などわずかで、そして何事も永遠には続かない。

この日正統帝は大明帝国における十度目の下海通蕃の禁を発布なされた。

月が満ちて欠ける。それを一つと数えるならば八百八十八を数える程の―――なんじゃわからぬか。
爺さんの爺さんの、そのまた爺さんの爺さんの爺さんの頃より続いておる偉大なる皇帝の行いじゃな。

古来禹は黄河を鎮め、夫差は刊溝を堀り淮河を手にし、楊広は京杭大運河を旧都洛陽へと引き入れた。
水運をつかさどる者こそが天下を統べると相場は決まっておる。

もっとも偉大な皇帝とな?
ふう~む、名を挙げれば限がないが、ここはやはり爺さんの爺さんを敬って永楽帝とさせてもらうかの。

永楽帝は海を越えた東夷・南蛮共へと勘合を授け、朝貢をお許しになられた。
水運だけでなく海運までもを―――そうせくでない。我が一族の中興も永楽帝のおかげよ。

一族の宝はなんじゃ? ふむよろしい、緑の茘枝じゃ。黒ではなく茶ではなく緑じゃ。

茘枝はとても繊細な果物でのう、
「一度日が落ちれば色が変わり、二度で香りが変わり、三度で味が変わり、四度で色・香り・味共に落ちる」と言われておる。

玄宗の御世では、我が一族は天秤棒を担いで茘枝を千両へと換えることは出来なんだ。
どんなに早く馬をかけても、長安へたどり着くころには緑の茘枝が茶の茘枝と変わっておった。
それでも玄宗の寵姫であった楊貴妃は、茶の茘枝を殊の外喜んでくださったそうじゃがの。

さて爺さんの爺さんじゃが、この世で初めて緑の茘枝を北京へ運び、永楽帝へと献上したのじゃ。

「剥けば凝りて水晶の如く、食えば消えて降雪の如し」永楽帝より頂いたお褒めの言葉じゃな。

これは何だと尋ねられた爺さんの爺さんはとっさに「妃子笑」と答えた。
それ以来庫裏への自由な出入りを許され、爺さんの爺さんは官位をも頂いた。ありがたい事じゃ。本にありがたい事じゃ。

おお、それはの。永楽帝の御世では倭寇を服属させ、海運が使えたからなのじゃ。船は馬よりずっと早い。
北京には海を渡り六十余国もの朝貢が訪れ、小宴は三日置き、中宴は八の付く日、大宴は新月と満月の日に行われておった。
爺さんの爺さんが茘枝を運んで通い続けた間、連日連夜庫裏の火が消えた事は一度もないそうじゃ。

そうかそうか、お前も紫禁城へ行きたいか。よしよし連れて行ってやろう。
今日ではないな、明日でもないな。そうせくでない、まだ正統帝の発布がなされたばかりじゃ。

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北京は今、倭寇に尻を抓られておってのう。
市場で出回る品の七割が密貿易によるものだとも言われておる。

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それを憂いた正統帝は親征を決断された。倭寇を打ち払う為五万もの兵を集められたのじゃ。
化外の地へ足を踏み入れるなど余程の覚悟がなくば、出来ぬことよな。
かの永楽帝もまた草原を越え砂漠を五度も縦断された。

正統帝もまたきっとそれに劣らず偉大な皇帝となられるであろうのう。万歳、万歳、万々歳。

倭寇の根城とな? はて八堵じゃったか、東都じゃったか、麻逸、いや蒲端でもない麻里魯……馬鹿もん。
耄碌なんぞしとらんわ! 倭寇の根城に詳しいもんがおったらそれは流氓に決まっとる。

我が一族は代々天秤棒を担いで真っ当な商売をしていたのが誇りじゃ。
ならず者と関係なんぞあるわけがなかろう。天罰が下るわ!

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往時の勢いはなかれども、大明帝国は十四国の朝貢を受ける世界の中心。
八十に迫る天命に溢れておるのも、世に恥じぬ振舞いをなされておる故。

正しき行いを続けるものにこそ、天は恩寵を授けてくださるのじゃ。
爺さんの爺さんは正しかった、とてもとても正しかった。

じゃからお前も天秤棒を―――棒を担ぐより竿を扱いたいとな? 本にこの子はもう。
そうじゃな、爺さんの爺さんも船の好きな変わり者じゃった。
そしてお前に爺さんの爺さんの話をしたこの私は愚か者じゃった。

よろしい、お前を船頭にして紫禁城へ向かうとしよう。
海運は使わぬぞ、戦が始まるからの。通恵河を通り北京へ至る水運を教えよう。

はっーはっはっはー。旧都ではないぞ、新都の北京へも水運は繋がっておるのじゃ。
なんとな、水運を使えば船が山を登ることも出来るのじゃ。
ほらではないぞ、閘門と呼ばれる秘訣があるゆえな。
これはの、かの忽必烈がもたらした北狄の秘術でな―――

戦いの後はどうする?

なぜその後があると思うのです?

あれから二十五年の月日が流れた。
私はまだ一度も船で水に浮いたことはない。

正統帝の海禁は果断なものであった。
全ての倭寇を取り締まるとし、貿易統制も始まったんだ。
役人の奴らは川賊と海賊の区別もついてはいなかった、船を所有していたらそれだけで誰もが牢屋へ入れられた。

爺さんは喜んで船を手放したよ。皇帝のする事に間違いはないってな。

その次は沿海部の非農民を内地へと移住させた。一族は遠縁の伝手を頼って蜀の地へと向かう事となった。
爺さんはそれでも喜んでいたよ。楊貴妃の墓参りができるぞってな。玄宗は偉大な皇帝だったと口を開けばそう言った。

引っ越しが終わったら、馬を引いて商いを始めよう。
玄宗の御世では長安で茶の茘枝が喜ばれた、同じことをすれば良いってな。

私が竿ではなく馬の扱いを覚えたころ、一度だけ爺さんにせがんで長安を目指したことがある。
紫禁城が無理なら、せめて長楽宮が見たいと駄々をこねたんだ。

でも辿り着けなかった。長安への道は大渋滞を起こしていたんだ。
二十日で行けると言われた道が、五十日たっても半分も進まない。
路銀が尽きれば次の仕入れができない。途中で諦めて帰る事になった。

爺さんは年のせいで膝が弱って、山道を越えられなかったからだと自分を責めていた。
背が曲がりすっかり小さくなってしまった爺さんを横目に、妙な話だと行商仲間はぼやいていた。
長安への道は漢の時代から幾度も拡張がなされている。五十日も続く渋滞なんて呂后の悪政でしか聞いたことがないってな。

水運と海運。二つの動脈を断ち切られた大明は確実に弱り始めていた。

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きっかけは流通の混乱だった。
ある所では穀物庫が空になり、その傍らある所では畑の作物が収穫されずに腐り落ちていた。
当然だろう、陸路のみでは市まで荷を運ぶことが出来ないんだからな。
余剰作物の栽培はすっかり下火となって、農民は租税と自給分しか食料の生産をしていなかった。

官庫までもが空になるはずはない、天候は良く、災害もないんだ。
めっきり老け込んで、外出も減ってしまった爺さんは噂を信じなかった。

何年たっても蜀へと届く茘枝は皆黒だった。とても貴人向けの売り物にはならない。
爺さんは後を任せた小作人が怠けているからだと毎年のように騒いでいた。

私はその頃、蜀の地を巡回していた朝貢国の一つである大越の軍隊へと黒い茘枝を売る事を覚えていた。
越人は故郷の味だと喜んで茘枝を買い求めてくれたのだ。彼らは様々な情報をもたらしてくれた。

蛮人相手に商売を始めた私だが、不思議と世間での評価は高かった。
後になって知った事だが、どうやら私は梁人を相手に商売をしていた扱いであったらしい。

大理の地はかの忽必烈、そして太祖洪武帝が治めた大明の本領。
そこへ茶の茘枝を売る我が孫は、幼いながらもまさしく正しいと爺さんが褒めていたそうだ。

……爺さんは目が悪くなり、黒と茶の区別がつかなくなっていた。
もしかしたら雲南と大越の区別もついていなかったのかもしれない。
あるいはすべて織り込み済みで、変わり者の私をかばってくれていたのか。

少なくとも当時の私は、毎日真面目に働く大明の兵隊さんをお助けしているんだと無邪気に喜んでいた。
そう、異国の軍が治安維持の重責を担わねばならない程の状況だとは、夢にも思っていなかった。

蜀の地は辺境だった。本当に本当に辺境だった。険しい山脈によって外界から隔離された閉じた世界。
万事塞翁が馬。きっと正統帝は、爺さんの言うように偉大な皇帝だったのだろう。
少なくとも私の一族にとっては……僻地へと追いやられたおかげでかえって食うには困らない生活ができたのだから。

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山に守られた揺り籠の外は、動乱の世になっていた。
どれだけ厳しく取り締まっても、倭寇が鳴りを潜める事はなかったのだ。

生業を失った漁業関係者か、荷揚げの出来ない港湾労働者か、あるいは食料搬入の止まった都市住人か。
いずれにせよ食うに困った食い詰め者たちが、ある日を境に蜂起した。

下海通蕃の禁は天下に知られる悪法と化していたんだ。

爺さんは謀反をおこしたのは白蓮教徒の連中だと言って、がんと譲らなかった。
太祖洪武帝の不興を招き、壊滅させられた邪教の集団が、倭寇と手を結び大明を滅ぼそうとしていると泡を吐いた。

永楽帝の行いが間違いのはずがない、永楽帝は民をいつも気にかけてくださっている。そう言いながら死んでいった。

もう爺さんにとって洪武帝と永楽帝と正統帝は同じものになっていたんだ。

元来、都市の住人は食料の生産を行わない。
農民であっても全ての都市へと食料を供給できるわけではない。故に都市では何時だって飢餓の危険は絶える事はない。

本来ならば、かつての大明帝国はこうした状況を緩和するために、農民へと商品作物の栽培を推奨していた。
農民へ現金収入の筋道を増やす事で、物納を銭納へと変えさせ徴税を簡素化。
また嗜好品の生産を押し付ける事で、都市からの農民への依存を共存へと置き換えた。

嗜好品は市場が狭く、売り歩くにはコツがいる。無学な農民達には手に余る代物だ。
その需要と供給の隙間に上手く滑り込んで、のし上がったのが爺さんの爺さんだったのだと今では理解できる。

もちろん商品作物の生産が増えても、食料の生産が増えるわけではない。
不足食料は銭を通じた、民間交易によって異国から補っていたのだ。

爺さんは密貿易を嫌っていたが、世の中綺麗ごとだけじゃどうにもならない。

農地は荒れ果て、都市は飢民に溢れ、人心はすさむ。
どれだけ異国からの尊敬を集めようと、民を見捨てるものは立派な皇帝ではない。

―――大明帝国の天明はすでに失われていたのだ。

海禁の煽りを最も強く受けたのが、沿岸部であった。
商品作物の生産を止めた農民と、都市の力関係は逆転した。

その為、食料の大半を輸入に頼っていた沿岸部での反乱は大規模であった。

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明の国は十へと引き裂かれ、うち五もの国が沿岸部に興った。

長じた私は生まれ故郷へと戻り、人々の苦しみを目にし、それを見過ごす事は出来なかったのだ。

爺さんの望みは偉大な皇帝が正しく国を治める事だったよな?

偉大でありさえすれば、それはどの皇帝でも良いはずだ。
なんせあんたは、農民上がりの高祖劉邦を偉大な皇帝だと褒めていたんだから。

民の為、倭寇と手を結んだ私は爺と名乗り故郷の地で閔を建国した。明ではなく閔を。
爺さんの願いを忘れないように、国姓を爺にしたんだ。

大明を打ち倒し、朕こそが唯一の皇帝となる事を誓って。

あとがき

ゲーム的な作業としては沿岸襲撃と海賊派遣、湾港封鎖を明へ行うだけのプレイでした。

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明の失った兵数は154kとなっておりますが、多分反乱軍によって失った兵数でしょうね。
カスタム国家側の被害数は0ですので。
明に隣接する朝貢国が明国内の反乱軍を退治してしまう為、南倭だけですと明の完全解体には至りませんでした。

多分後の世ではこの動乱を、十国の乱、あるいは国姓爺合戦と呼ぶことになるのだと思います。

倭寇ですか? それがいつの間にやらオランダとスペインに駆逐されたのか、歴史の狭間に沈んでしまい詳しい資料が残っていないんですよねー。
いやー残念だなー。どこかの誰かが東南アジア海賊共和国のAARを書いてくれれば、きっと倭寇の詳しい実態も判明するのでしょうけれどもねー。

短いながらもお付き合いくださり、ありがとうございました。
それではいつか又他国にてお会いいたしましょう。

AAR/海禁史紀事本末


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Last-modified: 2019-09-02 (月) 11:04:35