AAR/第十九回マルチ

補遺4 戦術機動について

―EU4における戦術についての概説―

 EU4の戦闘は一見戦力のぶつけ合いに見え, 事実PLが介入できることはかなり少ない.
とはいえ, 戦術機動の巧拙により差が出る部分がある事も事実である.
このページでは, 本マルチ中における具体例を示しつつ, どのような戦術機動や布陣が望ましいかについて議論を行う予定である.
何らかの形で, これからマルチに参加を希望される方の参考になれば幸いである.

内線戦略の是非と視界の大切さについて

 まず基本例として, 内線有利であることを実例を挙げて示したい.

hytm3Yn.png

まず, これはバイエルンでOttの先鋒を追い払おうとする筆者と, 筆者が見ていないと思って西部で攻撃をかけるFrance軍の図である.
だが, この動きは最前線における部隊の数から筆者に予測されており, すぐさま反撃を行うことを考えた.

mjTy0AM.png

 France PLの予想に反して筆者は西部戦線もちゃんと見ており, Luxenburgへの投入戦力が足りていない
(しかも強行軍でmoraleが回復していない)ことを見て取った.
東部に移動しかけていた部隊を即座にLuxenburgに引き返させる.
これが出来るのが内線有利の何よりの証拠であるだろう.
また要塞がZOCを生成するという事実は, 内線を形成するためのZOCの重要性も引き立てる.

筆者の転進に際し, Franceも自らのやらかしを察したらしい.

France : あっ
筆者   : ガバりましたねえ, 今(ねっとり)
France : ちょちょちょ(汗… 行きたい場所そこじゃない
BAhsugW.png
筆者 : あっ殲滅した
France : ファー

 53kの殲滅という中々の戦果を挙げることができた.
では, 何がこの勝利をもたらしたのであろうか?

 1つには, 敵側の攻勢発起地点が悪かった事を挙げられるだろう.
すなわちバイエルンとルクセンブルクは十分に近く, 同じ画面に収まってしまう範囲である.
それゆえ, かなり高い確率で単一の視界の中に納まってしまうが, これでは奇襲効果が薄れてしまう.
史実のWW1でも奇襲効果は極めて重要であったが, 実際問題人間の処理できる範囲は視界に限定されているわけで, これは視界の大切さを示して余りある.
要するに, 相手のリアル視野と視界を意識しつつ攻勢に出ることで, 相対的に優位になる事が出来るのだ.
逆にこれを意識せずして行われた攻勢は, 総戦力に差がなければ成功することは難しい.

ローテーションの効率について

 次に, ローテーションについて述べておきたい.
かつては絶対の戦術として神格化されている向きもあったローテーションであるが, 今の仕様では, はっきり言って効率が良いとはいえない.
理想的に管理できるなら, という但し書きをつけても微妙であろう.

 だが, そもそも昔からそこまで有効な戦術だったのであろうか?
ここでは, ローテーションの過去と現在について述べる.

ローテーションの概略

 過去におけるローテーションとは, 付属する些末なテクニックを除けば
”moraleの枯渇した部隊を撤退させる行為“ + “戦線崩壊前に予備の戦力(前衛)を投入する”という行為で表される.
これは, 常に戦線幅を満たす砲兵 + 前衛を張り付け続ける事を目的とした行為である.
この際投入する前衛戦力は砲兵のない軍団(=歩兵のみ)でも構わず, そのためユニット種別に部隊を分割する事などが行われた.
また, ローテーションに付属する(ほぼ必須の)テクニックとして, 主導で退却させた歩兵のみの部隊を保護するため, 周辺プロビに予備隊を置いておく事がある.
これを怠った相手や, ミスによって撤退先を読み切った相手を殲滅するのはかつてのマルチでは常套手段であった.

 というのも, moraleが完全にすり減った部隊の退却先をコントロールすることは, “ほぼ”不可能*1であるからで, それゆえ適度にmoraleの残っている段階で撤退させざるを得ない.
これらテクニックはローテ戦術を支えるキモでもあるのだが, しかしこれらを忠実に実行すれば, 当然操作量は戦線を構築する軍団数に比例して莫大なものになる.
すなわち, 会戦中の軍団個々のmoraleを把握し, 擦り切れる直前に撤退させることが要求されるのだ.
フォローする術がないわけではないが, 結局それすらヒューマンエラーとの闘いに過ぎない.

 そもそもmorale崩壊前のユニットを前線から引き抜くことは, それが一時的にすぎないにせよ会戦中における陣形を大きく乱し, キルレ悪化を招きかねない.
このように, 莫大な操作量とキルレ悪化の懸念がローテ戦術の弱点である.
シングルなら時間を止められるが, マルチでそれをやるのはむつかしい.

ローテ戦術の意義について

 畢竟, ローテ戦術によって得られるのは, “戦力と操作量に勝る側が勝つ”という当たり前の結論に過ぎない.
戦力とスキルで負けている側がローテをしても, ローテ自体はキルレを全く変動させない以上,
それは必然的な敗走を先延ばしにしているに過ぎない.
要するにローテ戦術で改善されるのは一度の会戦における勝敗のみであり, 統計的に見たキルレは殆ど変わらないと言う事だ.
むしろローテは, 先述したように, 操作を少しでもミスれば宣戦幅を満たさないようになってしまい, この時キルレシオは著しく悪化してしまう.
さらに, この技は莫大な操作量を要求するが, クリックミスなどのヒューマンエラーの発生は操作量それ自体に比例するため,
これも加味してしまうと, ローテ戦術はそれに付属する小技などから圧迫される操作量に釣り合っている成果を得られていたのか疑問である.
ローテに注いだ操作量が有れば, 他の戦線で敵を苦しめ圧倒できたのではないだろうか?
一か所に力を結集した攻勢を行うより, 斉頭面で前進した方がよほど効率的ではないだろうか.
戦術は戦略の従者であって, 逆ではない.
ローテ遂行のために戦略的利益を喪失しているなら, それは本末転倒である.

 ただ, 聖戦CBのように, 戦闘への勝利が大きな戦勝点を齎すCBでの宣戦布告であるなら, ローテは中々に有力な戦術ではあった.
とは言え, 長期戦を考えるなら, 同じ操作量で相手の国土を削り取った方が効率的だとも考えられるのだが……

ローテ戦術の現在

 かつてにおいても操作量当たりのコスパはそこまで良くなかったと思しきローテ戦術であるが, verの更新によってローテの価値は暴落した.
すなわち, 複数の軍団で戦っている際, その中の一部の軍団を手動で撤退させてしまえば,
全ての軍団のmoraleが下がってしまうのだ.
これはローテ遂行を著しく困難なものとした.
部隊を撤退させた瞬間に全軍のmoraleが低減されてしまうため, 一部隊を引き抜くだけで全軍が敗走しかねない.
そもそも大規模会戦の勝利を目的として面倒な手間を我慢してローテしているわけで, 会戦に敗北する事を許容してしまえば本末転倒である.

デススタック戦法について

 ローテの廃れた現在のマルチでは, Civ4で言うところのデススタック的な戦法が猛威を振るっている.
これが何故強いか, と言う事に対する考察と, デススタックへの対策をここでは考える.

デススタックの強さについて

 この戦法の強さの一端は, EU4における殲滅ルールに起因する.
EU4で敵軍団を殲滅する方法は, 細かいものを含めれば4つある.

  1. 敵兵そのものを殺しつくす
  2. 海軍で輸送中に撃沈する
  3. 撤退不可期間(戦闘開始から12日)に敵のmoraleを削り切る
  4. 敵軍団にその10倍以上の数を持つ軍団で殴りかかる

 ここで, 最初に1.とて上げたものは, ほぼ不可能であろう.
ごく稀に充足率が払底した敵軍団の補足に成功し, これが発生するが, 互いに4つに組み合っている状況では, まずもってお目にかかることはない.

 次に, 2.で示したものも困難である.
大抵輸送艦に護衛はついているし, そもそも戦時に輸送している状況自体がレアである.
海上で輸送されている途中の陸兵は, 上陸するまで遊兵の方なものに過ぎず, 戦時にこのような非効率な現状は出来る限り避けるべきだからだ.

 3.に示したmorale崩壊による殲滅は比較的よく見るものだろう.
シングルやマルチを問わず, 殲滅を食らう状況の殆どがこれではないだろうか?
あらかじめmoraleが崩壊しかかっている部隊を殴りつけたり, あるいは質に圧倒的な差がある状況で殲滅は起きやすい.
(序盤限定で騎兵スパムは殲滅を誘起しやすくするが, それは基本的に序盤だけである)
ただ, これは凄まじい質の差がなければ難しい.
ゲーム後半, 特にMil 22以降の時代に入ると砲兵火力での圧倒による殲滅が増加するが, これとて不確定要素が高い.

 では, 最後の4.はどうであろうか?
某AARのコメント欄にも書いたが, 10倍以上の軍団を一纏めにしてぶつけると敵軍団を消すことができる.
これはあまり知られていない技であるが, 問答無用の殲滅であり非常に有用である.
例えば破産してmoraleの消し飛んでいる国家の201kの軍団ですら, プロイセン軍20kにぶつければこれを一瞬で殲滅できるのだ.
これはゲーム的に数少ない, 全く質の関係しない殲滅条件であり, ゆえに「数で押す」国家がした場合凄まじい戦果を挙げる.

 かつてはプロビを跨ぐ毎に消耗判定がなされていたが, これが月ごとの判定に変更されたことも大きいだろう.
たとえプロビを跨ぐ毎の消耗が2%であっても, 10プロビ跨げば18.29%, 20プロビ跨げば33.24%も削られてしまう.
だが現在の消耗判定は毎月の頭なので, 200kでスタックしていても毎月2%しか溶けないのだ.
これは大きく消耗の存在意義を低減しており, 同時にデススタック戦法の存在価値を高めている.

デススタックへの対抗手段

 デススタックに対抗する技としては, 一つには分進合撃がある.
すなわち800kのデススタックに対しては, 殲滅されない程度の規模, 例えば100k程度の軍団に軍を分割し, それでもって敵軍を捕捉し増援を投入する.
これは損耗的には有効であるし, 逐次増援によってmorale的に若干の優位を得る事ができる.
(後列もmoraleダメージを受けるため, 逐次増援する方が若干morale的に有利)
だが, 結局操作量とトレードオフであるため根本的解決からは程遠い.
ただ, 操作量を集中して投入すれば, 高確率で相手を撃退できると言う事でもある.
おそらくこれがデススタック戦法への対策の本命となるであろう.

 他の対策としては, プロビを焦土にして撤退することや, 機動の高い将軍をつけて敵の鼻先を逃げ回らせるなどと言った小技が存在するが, どちらも容易に対策出来てしまう.

総括

 要するに, かつてのローテ戦術全盛期と比較して, 部隊を手動撤退させることの効率は恐ろしく下がり, デススタック戦法が主流となっている.
だが, これは操作量を注ぎ込むことで対策可能である.
すなわち, 操作量を消費して分進合撃しつつ逐次増援を注ぎ込むことで, 若干の優位を取る事ができる.
だが結局これも操作量とトレードオフであり, 現在のマルチの戦争では, 各線上にどこまで操作量を注いでよいかを判別する事が必要となるであろう.


*1 おおよその位置を予測することは出来るが, 確定ではない

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Last-modified: 2017-07-02 (日) 17:22:49